ローマへの移動途中にヴェローナへと寄る。地理的には真逆だけれど、日程と、鉄道パスの都合上高速列車の使用回数を減らさなきゃならない故の選択。
ヴェローナへ来た目的はスカルパのカステル・ヴェッキオ美術館を訪れるため。中世の城の一部をギャラリーへと改修したこの建築を賞賛する声が多く、前々から非常に興味があった。
敷地内に入りギャラリー部を見ても、外観にはさほど手を加えられていないように見える。実際には西端の部屋が壁と屋根を取り払われ外部化していたり、開口部にそれぞれ異なる設えが施されているがそれほど目立たない。
右手へとエントランスに向かうと砂利敷きの道が石畳みに変わり、数歩歩くと左に折れ曲がり植え込みに隠れていた池が目に入る。前方に入り口が見えるが、軸線上からはずらされて配置されている。入り口にたどり着くまでにこの様にジグザグしたアプローチを辿るが、中に入り受付からギャラリーを見ると端の空間の出入り口までが一気に見通せる。部屋同士は厚い壁に開けられたトンネルで結ばれているため南側の中庭に面した開口部の設えの違いによって光の状態が個々に違うのが見て取れる。
このギャラリー部分には彫刻作品が展示してあるのだが、トンネルを通して見えるそれらは思い思いの方向を向いて置かれている。トンネルをくぐり隣の部屋に移動し、彫刻と正対しあるいは彫刻が向いている方に視線をやると、彫刻を通してスカルパが「空間のここを見ろ」と手招きしてくれている様な気持ちになってくる。
一番端の部屋は壁と屋根が取り払われ、別館への連絡通路、別館からギャラリー2階へと渡る橋の架けられた空間となっている。ここでも連絡通路のわずかな手すりのデザイン、残された天井の切り欠き方や壁から突き出た階段、そして2階に上がって階段のデザインと、ここでもジクザグのデザインが多く見られ、そしてそれらはできるだけ少ない操作で達成されようとしている。
城の改修にあたり、軸性の強いギャラリー部分は元の形を尊重し、既存部同士をつなぐ連絡部で軸性をずらしたデザインを行うことで既存の保存と共に新しいデザインを組み込んでいるように感じられた。
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